( 2009年2月18日更新 )
陣痛って、なんで痛いんでしょうね。
私はずっと不思議でした。
昔の人はお産を、「障子のサンが見えなくなるほど痛い」と表現したようですが、実際に自分も経験してみて、本当に、そのことは実感しました。 その時は夢中でしたし、あとで記憶をたどっても、断片的な画面のような風景しか思い出せず、何を見たかはほとんど覚えていません。
それにしても、動物がお産をするときも痛いのかしら。 たとえば、動物は、出産の時も外敵から身を守らなければならない。 それなのに、痛みでうんうんうなっていて他のことが目にはいらなくなってしまったら、その時に敵に襲われたら困るのではないのかしら。
思うに付け、陣痛が痛い理由ってわかりません。
だって、種の保存の論理からすれば、外敵から身を守りやすく、次の出産もすぐにしたい、と思えるようにした種の方が、子孫が繁栄するような気がしませんか? ダーウィンの進化論でいえば、陣痛が超痛い種族がだんだん淘汰されて絶滅していってしまう気がするのですが。。。
一般に、人間のお産がおもいのは、頭が大きくなりすぎたため、といわれていますよね。 人間は他のほ乳類と比べても頭が極端に大きいために、母体の骨盤を通過するのがとてもたいへんなのだと。
陣痛の痛みの原因は子宮を収縮させるために体が出すホルモンの一種(厳密にはホルモンとは言わないが)の物質なので、子宮が収縮するときに一緒に痛くなるのは仕方がないことのようです。だってその物質が体に出てこなければ子宮も収縮しないですものね。
人間のお産では、骨盤きつきつの状態で胎児の頭が降りてくるわけだから、子宮の収縮もものすごく強くならないとお産はすすまないんですよね。 その物質とは、プロスタグランディンといって(他の物質も関与しているけど)、平滑筋という自律的に動く筋肉を収縮させる作用を持っています。子宮の筋肉も平滑筋の一種です。プロスタグランディンによって、近い場所では腸の筋肉も収縮させます。(プロスタグランディンのせいで下痢の時お腹が痛いんです。もっと厳密にいえば、プロスタグランディンの種類は両者で違うのですけど。)
さて、この痛みって結構大事な役割を果たしていて、痛みを感じない、というのはとても恐いことなんです。
例えば考えてもみてください。
足に釘がささったら当然めっちゃ痛いので反射的に足をひっこめますよね。 もしも痛くなかったら、足に釘がささっても気がつかないかもしれません。 えっ!と目でみて初めて気がついて手当をしても、その間に出血多量になっているかもしれませんし感染をおこしてたいへんなことになっているかもしれませんよね。
陣痛の痛みも、異常な状態(例えば子宮破裂など)の特別な時は、尋常でないものすごい痛みになりますから、そこで異常が発見されて対応し事無きを得ることもあるわけです。
(普通の経過ですら、お産の痛みは尋常じゃないのに、更に尋常じゃない痛みっていったいどんなんやねん!?と突っ込みたくなるかもしれませんが、たくさんのお産をみていると、確かに尋常じゃない陣痛の人もいるわけです。それでも、産婦人科医でも判断が難しいこともあります。)
だから、痛みって、異常の発見のために必要というか、なんか医者にとってはそんな存在でもあるわけです。
逆に言えば、無痛分娩って、産婦人科医にすれば結構こわいです。 本人は痛くないから涼しい顔をしているけど、実際には子宮が破裂しそうになっている状態、というのは考えただけでもぞーっとします。 無痛分娩でなければ七転八倒しているような痛みのはずなのに、麻酔がかかっているから感じていないだけで。 それに、あまりにも痛みを取り去ってしまうと、子宮の収縮も減ってしまうわけで、お産のすすみも悪くなってしまいますし。 そこを、加減しながら麻酔をかける(異常な状態の時にはちゃんと痛みを感じてもらえるような)のが腕のみせどころ、というわけですけどね。
というわけで、痛くなくお産したいなあ、というのは誰もが思うわけですが、 でも、ま、必要な痛みなので仕方ないと思って、がんばりましょう。
(こうさきようこ改めこうさきはるこ)
